シミをよりしっかり隠したいと考えた場合、最も単純な方法はファンデーションで厚く覆い隠すことですが、その方法は厚化粧で不自然な印象を与えてしまいます。これまでは、粉体から反射する“光”に着目し、“自然な肌色の光を放つことによって自然にシミを隠す効果”を持つ粉体を用いてきましたが、今回は、実際とは異なるように見せる“脳の視覚メカニズム”も利用することで、より効果的にシミを隠すことを実現しました。それが「光イリュージョンパウダー」です。
視覚メカニズムを利用したシミを隠す効果
視覚メカニズムを利用しているものとして、レースのカーテンがあります。レースのカーテンは、視覚メカニズムを利用することによって“覆い隠さずに、向こう側を見せなくする効果”を実現しています。同様の効果を、シミに対しても発揮させることを研究しました。
シミモデルの上に大きさが異なる格子を重ねて、シミの見え具合を比較すると、格子が小さいAはシミの存在がわかりますが、格子が大きいBはシミの存在がわからなくなっています。これは視覚が輪郭をたどることで対象を認識していることを表しており、シミの輪郭をたどることが困難になるためにシミが見えなくなるという効果です。

光イリュージョンパウダーの開発
光イリュージョンパウダーは、従来のシミ隠し粉体のサイズを大きくすることによって、“視覚メカニズムを利用したシミを隠す効果”を発揮できるように開発された、雲母チタンと酸化鉄から成る複合粉体です。

視覚メカニズムを利用したシミを隠す効果の研究/粉体の評価
図1は、「視覚はどのようにして物体を検出または識別しているのか」というメカニズムを明らかにするために、多くの視覚研究で用いられてきた方法を示す概念図であり、その対象となる物体をシミモデルにしたものです。この図は、シミモデルに様々な空間周波数(小刻み~緩やか)の波を重ねた時、空間周波数の違いによって、対象の見えやすさが異なることを示しています。言い換えれば、シミモデルに対して“特定の空間周波数”の波が重ねられることによって、シミモデルが見えなくなります。これが、前述した効果の、より根本的な原理であるといえます。
今回の研究ではまず、対象がシミであるときに、このシミが見えなくなる“特定の空間周波数”がどのように決まるのかを解析しました。その結果、シミの形状から“特定の空間周波数”を推量することが可能になりました。そして、粉体やファンデーションを塗布してできる塗布膜を撮影した画像から、各空間周波数成分に分解し(図2)、“特定の空間周波数”の成分が塗布膜にどのくらいあるのかを測定することで、効果の強さを正確に評価できるようになりました。
その評価方法を用いてファンデーションに配合する機能性粉体を評価した結果、粉体サイズの制御によって“視覚メカニズムを利用したシミを隠す効果”が確かに発揮されること、およびファンデーションに配合できる粒子サイズの範囲内であれば、大きいほど“視覚メカニズムを利用したシミを隠す効果”が高いことが確認されました。そして、この研究成果を、光イリュージョンパウダーの開発に活かしました。


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