ローズ、オレンジフラワー、バイオレットなどの天然精油を含む香りを女性にかいでもらい、効果を検証しました。その結果、脳から「オキシトシン※1」と呼ばれるホルモンが分泌されることを発見しました。この「オキシトシン」は血液を通して、肌まで到達します。さらに、「オキシトシン」は、肌の表皮細胞と真皮細胞に働きかけて、それぞれから「IGF-1※2」と呼ばれる物質を分泌させ、肌の幹細胞の「動く」という能力を高める(幹細胞を元気にする)ことを見出しました。
肌の幹細胞は、肌の細胞のもととなる細胞で、肌の生まれ変わりを担っています。しかし、肌の幹細胞の元気度には個人差があることがわかってきました。ローズ、オレンジフラワー、バイオレットなどの天然精油を含む香りには、元気のない肌の幹細胞を元気にする効果があり、若々しい肌に導く上で有効であると考えられます。
※1「オキシトシン」は赤ちゃんに母乳を与える時に、母親の脳から出てくるホルモンとして知られています。
※2「IGF-1」は筋肉、骨、肝臓、腎臓など、組織の細胞の成長を促進する物質です。
ローズ、オレンジフラワー、バイオレットなどの天然精油を含む香りが幹細胞を元気にするメカニズム
ローズ、オレンジフラワー、バイオレットなどの天然精油を含む香りによって、オキシトシンの分泌が促進される
ローズ、オレンジフラワー、バイオレットなどの天然精油を含む香りを女性にかがせ、香りをかいだ5分後の唾液中のオキシトシン濃度を測定した結果、香りをかぐ前に比べ、オキシトシン濃度が上昇しました。
オキシトシンによって、肌の細胞からIGF-1 が分泌される
培養した表皮細胞と真皮細胞それぞれにオキシトシンを添加し、IGF-1 の産生をmRNA の発現量で測定しました。その結果、オキシトシンによって、表皮細胞と真皮細胞それぞれのIGF-1 の産生が高まることが明らかになりました。
IGF-1 によって、幹細胞の元気度が高まる
培養した幹細胞の動く軌跡をコンピューターで解析し、幹細胞が一定時間に動く距離を元気度として、IGF-1 添加した場合の元気度(移動距離)を、添加しない場合と比較しました。その結果、IGF-1 を添加すると幹細胞の元気度が高まることが明らかになりました。
- 第32回 日本分子生物学会 (2009)