シミをしっかり隠す最も単純な方法は、ファンデーションで厚く覆い隠すことですが、厚化粧で不自然な印象を与えてしまいます。
これまでは、粉体から反射する“光”に着目し、“自然な肌色の光を放ってシミを隠す効果”を持つ粉体を開発し、ファンデーションに応用してきました。より自然にシミを隠す効果を持たせたいと考え、視覚メカニズムの応用を試みました。そして、実際とは異なるように見せる“錯視(脳の視覚メカニズム)”効果を利用することで、効果的にシミを隠すことを実現しました。
錯視(視覚メカニズム)を利用したシミを隠す効果
錯視を利用している一般的なものとして、レースのカーテンがあります。レースのカーテンは、窓を覆い隠さなくても外から家の中を見えなくすることができます。これは、レースの模様が物体の輪郭の認識を妨げて見えなくする“錯視”効果によるものです。そして、この効果は、レースの目が粗いほうが高くなります。同様の効果を、シミに対しても発揮させることを研究しました。
シミモデルの上に大きさが異なる格子を重ねて、シミの見え具合を比較すると、格子が小さいAはシミの存在がわかりますが、格子が大きいBはシミの存在がわからなくなっています。これは視覚が輪郭をたどることで対象を認識していることを表しており、シミの輪郭をたどることが困難になるためにシミが見えなくなるという錯視効果です。
錯視効果でシミを隠す粉体の開発
ファンデーションで錯視効果を発揮させるため、視覚研究の手法を用いて研究しました。その結果、粉体サイズの制御によって“錯視を利用したシミを隠す効果”が発揮されること、およびファンデーションに配合できる粒子サイズの範囲内であれば、大きいほど“錯視を利用したシミを隠す効果”が高いことがわかりました。そこで、自然な肌色の光を放つ、従来のシミを隠す粉体のサイズを大きくすることを研究しました。自然な肌色の反射光を発する、サイズの大きな粉体の開発を目指し、雲母チタンと酸化鉄からなる複合粉体にたどりつきました。この粉体の開発によって、より自然にシミを隠すことを実現しました。
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