背中や胸元などの身体にできるニキビの多くは「マラセチア」という皮膚常在菌が関わり、「マラセチア毛包炎」と呼ばれています。しかし、マラセチアに関する研究はあまり多くありません。
そこで、マラセチアに関する研究を行いました。
マラセチア毛包炎に関わる菌種
マラセチア毛包炎患者の皮膚から検出されるマラセチアの菌種を調べ、人の皮膚に常在する9種類のマラセチアのうち、マラセチア毛包炎に関わっているのはM. furfur、M. globosa、M. restricta、 M. sympodialis、 M. dermatis の5種類であることを明らかにしました。
しかし、これら5種類のマラセチアは、マラセチア毛包炎のない健常皮膚にも同様に存在していることも確認しています。すなわち、マラセチア毛包炎は、どんな人でも発症し得るものであり、マラセチアの異常な増殖を抑えることがマラセチア毛包炎を防ぐことにつながると考えられます。
マラセチアによって起こる炎症メカニズム
マラセチアによって起こる炎症が2つの炎症反応によって起きていることを見出しました。
一つ目は、毛穴の細胞がマラセチアを異物と判断して炎症を起こす免疫反応によるものです。二つ目は、マラセチアが産生する皮脂分解酵素リパーゼ(以下マラセチアリパーゼ)によって皮脂が分解されて炎症物質(遊離脂肪酸)に変わり、炎症を起こす反応です。
免疫反応による炎症
5種類のマラセチアと、表皮細胞(皮膚の細胞)を共培養して、表皮細胞から分泌される炎症性サイトカイン(IL-1α、IL-6、IL-8)の量を、共培養した6時間後と24時間後に確認しました。その結果、5種類すべてのマラセチアによって、炎症性サイトカイン(IL-1α、IL-6、IL-8)のm-RNA発現量が高くなることが確認されました。また、5種類のマラセチアの中では、M. furfur による炎症性サイトカインのm-RNA発現量が最も高く、免疫反応による炎症作用の高いことが推察されました。
マラセチアリパーゼによる炎症
マラセチアリパーゼは、皮脂を分解し、遊離脂肪酸という炎症物質に変えます。そして、遊離脂肪酸が毛穴の中を刺激して、身体のニキビの炎症を起こします。
5種類のマラセチアリパーゼの活性作用を比較しました。その結果、M. globosa、M. restricta、 M. sympodialis、M. dermatisのマラセチアリパーゼの活性が高いことを確認しました。マラセチアリパーゼによって起こる炎症には、これら4種類のマラセチアの影響が大きいことが推察されました。
「肌荒れ・ニキビ」の記事一覧
幹細胞の多角的研究
幹細胞に関する研究について積極的に行い、多角的な分野で研究しています。