肌荒れは、皮膚表面の角質細胞がはがれやすくなり、カサつきやごわつきのある状態のことを指します。角質細胞のはがれやすさは、角質細胞膜の状態や角質細胞を接着する細胞間脂質の量によって左右されます。
表皮の角化細胞の膜に存在するタンパク質「NHE1※」が角質細胞膜の形成や細胞間脂質の生成をコントロールしていることを発見しました。
※NHE1:Na⁺/H⁺exchanger1
NHE1の機能低下が肌荒れの原因に
NHE1は、表皮の角化細胞の膜に存在し、ナトリウムイオンと水素イオンを交換するイオン交換輸送体です。今回、イオン交換輸送体としての機能だけでなく、角質層形成に関わっていることを発見しました。角質層形成には、角質細胞膜の形成やセラミドなどの細胞間脂質の生成、角質細胞の水分保持能が関わっています。NHE1の阻害剤を角化細胞に添加して影響を研究した結果、角質細胞膜の異常に関連するタンパク質(SPRR1B)が増加し、角質細胞膜形成に関わる酵素(TGM1)、バリア機能を担うセラミド合成酵素(SPT)、角質細胞の水分保持に関わるタンパク質であるフィラグリン(FLG)が減少することがわかりました。このことは、NHE1の機能低下が角質層形成を乱すことを指しています。
角質層形成が乱れると角質細胞がはがれやすくなり、肌荒れが起こります。そのため、肌荒れを防いで肌の調子を整えるためには、角質層形成をコントロールしているNHE1の機能を高めることが有効と考えられます。
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