皮膚は再生能力に長けた組織であり、その再生を担っているのが幹細胞です。近年では、幹細胞を応用したティッシュ・エンジニアリング(組織を体外で人工的に作る技術)の研究が進歩し、体外で皮膚組織を再構築した人工皮膚は再生医療の分野でいち早く実用化されています。 これまでに、安定的な人工皮膚モデルの作製やその応用性について研究を進めており、幹細胞の3次元培養技術を改良し、本人の“細胞”から本人の“顔”を再現した人工皮膚モデルの作製に成功しました。
3次元での培養に適した足場材料の選定
細胞培養により顔のような複雑な立体構造を再現した人工皮膚を作製するためには、細胞培養の足場として使用する素材が重要です。高い成型性と培地の含水性などを兼ね備え、作業性に優れるアルギン酸ハイドロゲルを足場材料として選定し、全顔を模した鋳型に注ぎゲル化させ、顔形状を再現した細胞培養の足場を作製しました。

人工全顔皮膚モデルの作製
真皮幹細胞を含有したコラーゲンゲル(人工真皮層)の表面に表皮幹細胞を播種した組織を、顔形状を再現したアルギン酸ハイドロゲルの培養足場に被覆させた後、皮膚組織を再生しました。

再生した人工皮膚モデルは、足場全体が皮膚組織で覆われており、立体的に顔の皮膚を再現できていることが確認できました。また、病理学的な評価から、表皮と真皮が形成され皮膚組織が構築できていることを確認しました。

抜去毛の毛包幹細胞を用いた、本人の幹細胞から再現した人工全顔皮膚モデルの開発
抜去した毛髪の毛包組織から幹細胞を採取し、人工全顔皮膚モデルを作製する技術を開発しました。この方法で作製した人工全顔皮膚モデルは、その人の細胞から、その人の顔の形の皮膚を再現することができます。

- 第29回日本顔学会大会(2024) 菅沼賞受賞