毛髪が生える仕組み
毛髪は毛母細胞から作られます。この毛母細胞の起源は、毛穴の中にある毛包のバルジと呼ばれる領域に存在する「毛包幹細胞」です。毛包幹細胞は、前駆毛母細胞を経て毛母細胞へ分化することで、日々毛髪が生み出されています。
毛包幹細胞が存在する特殊な領域
毛包幹細胞は、「バルジ」と呼ばれる特殊な領域に存在することがわかっています。メナードは、この毛包幹細胞が存在する領域をより詳細に解析し、デコリン(Decorin)と呼ばれるタンパク質が特異的に発現していることを突き止めました。 デコリンは、毛包幹細胞を維持するために重要な役割を果たしており、毛包幹細胞自身が生成しています。そして、加齢や活性酸素、精神的ストレスなどによってデコリンの産生が低下すると、毛包幹細胞が維持できなくなり数が減少し、毛髪を作りだせなくなります。 つまり、加齢による薄毛は、毛包幹細胞を維持する「デコリン」の産生低下が原因と考えられます。
- Journal of Dermatological Science Vol.45 No.12 (2018)
ゲノム編集による薄毛モデル毛包幹細胞の確立
ゲノム編集は、DNAを切断する酵素とその酵素を任意のDNAの領域に運ぶ塩基配列(ガイドRNA)を同時に細胞内に導入し、目的の部位で遺伝子を変化させる技術です。このゲノム編集技術を用いて、デコリンの遺伝子配列を変化させ、正常なデコリンを産生できない毛包幹細胞を作製し、試験管レベルにおいて薄毛のメカニズムを解析できる薄毛モデル毛包幹細胞を確立しました。
「発毛」を評価するモデル
薄毛モデル毛包幹細胞を用いて、発毛を評価するモデルを確立しました。 通常、毛乳頭細胞と毛包幹細胞を混合培養すると、「スフェア」と呼ばれる球状の細胞塊を形成し、約10日間培養すると毛包様の突起が出現します(発毛)。この突起が形成されている部分には、毛包細胞への分化マーカー(インボルクリン)も確認され、スフェアの突起は毛包幹細胞から分化した細胞によって生み出された毛包のモデルと考えられます。一方、毛包幹細胞の半分を薄毛モデル毛包幹細胞に置き換えて混合培養を行うと、発毛状態を示す突起が小さいスフェアを形成しました。このように「発毛」を評価する「薄毛モデル」を確立しました
「育毛」を評価するモデル
メナードではこれまでに人工皮膚モデルの作製技術を研究開発してきました(※)。その技術を応用し、人の毛包を人工皮膚に移植することで、「人工頭皮モデル」を作製しました。このモデルは一定期間における毛髪の成長を観察することができるため、「育毛」を評価できます。
※主な研究 幹細胞 表皮幹細胞をゲノム編集し、刺激に敏感な肌を再現した皮膚モデルを開発を参照
- 日本薬学会第141年会(2021)