ファンデーションには、肌の欠点をカバーしながら、肌が本来持っている質感を損なわない自然な仕上がりが求められ、酸化チタンや板状硫酸バリウムといった粉体が用いられます。酸化チタンは、一般にカバー力を得るために用いられますが、透明感を失わせ不自然な仕上がりになったり、ファンデーションののびのなめらかさを損なう場合が多くあります。また、板状硫酸バリウムは、透明感と毛穴の凹凸を目立たなくする仕上がりを得やすい反面、色むらやくすみをカバーするという点では必ずしも十分とはいえません。
そこで、微粒子酸化チタンと板状硫酸バリウムの粉体の欠点を補い、なめらかな使用感があり、毛穴の凹凸やくすみといった肌悩みをカバーして、肌の自然な明るさを生み出す、新規複合粉体を開発し「するんとなめらかパウダー」と名付けました。
液面プラズマ分散技術を応用
微粒子酸化チタンと板状硫酸バリウムの欠点を補う新規複合粉体の開発で課題となったのは、微粒子酸化チタンの「凝集しやすい特性」でした。この特性のため、微粒子の酸化チタンは、これまでの一般的な技術では凝集してしまい、板状硫酸バリウムの表面に均一に固着させることが困難でした。
そこで、名古屋市工業研究所※1と公益財団法人名古屋産業振興公社※2と共同で研究していた「液面プラズマ」と呼ばれる放電を利用した分散技術を応用し、凝集のない微粒子酸化チタンの水分散体を調製して、板状硫酸バリウムの表面に適量の微粒子酸化チタンを均一に固着させました。
液面プラズマ分散技術
水中と気中にそれぞれに電極を配置し、電圧をかけると気中に配置した電極から水面に向かって放電が起きます。この放電を「液面プラズマ」と呼んでいます。液面プラズマは非常にエネルギーが高いため、微粒子酸化チタンの水溶液に液面プラズマを照射すると、放電の衝撃により凝集体がバラバラに離れるとともに、粒子表面の電気的な性質が変化し、凝集しにくい、均一に分散された微粒子酸化チタンの水溶液を得ることができます。この水溶液により、板状硫酸バリウムの表面に適量の微粒子酸化チタンを均一に固着させることが可能になり、新規の複合粉体「するんとなめらかパウダー」の開発に至りました。
毛穴の凹凸やくすみを自然にカバーし、透明感を付与する効果
板状硫酸バリウムは、肌表面でなめらかにのび、均一に塗布しやすい粉体で、光を透過させる性質を持っているため、透明感のある仕上がりを演出できますが、カバー力という点では十分ではありません。しかし、微粒子酸化チタンを板状硫酸バリウムの表面に点在させた「するんとなめらかパウダー」は、光の一部を透過ではなく散乱させるようになり、この散乱光によって、毛穴などの肌の凹凸の影を消して目立たなくしたり、肌のくすみを自然にカバーすることができます。
なめらかな肌に仕上げる効果
微粒子酸化チタンが表面に固着されている「するんとなめらかパウダー」は、凝集体ができず、板状硫酸バリウムが重なり合うことなく整列し、薄く均一に塗布することができます。
「するんとなめらかパウダー」を配合したパウダーファンデーションと配合していないパウダーファンデーションを皮膚モデルに塗布し、のびのなめらかさと塗布膜の均一さを比較しました。「するんとなめらかパウダー」を配合したパウダーファンデーションは、なめらかにのび、薄く均一に塗布できます。