加齢にともなって肌に蓄積する老化細胞
肌の細胞は、幹細胞から生まれ、それぞれの役割を果たし、やがて衰えていきます。衰えた細胞(老化細胞)は機能が低下するだけでなく、炎症性サイトカインやコラーゲン分解酵素といった肌の老化を促進する物質を分泌するようになります。こういった現象はSASP(senescence-associated secretory phenotype:細胞老化随伴分泌現象)と呼ばれています。
老化細胞は、加齢にともなって肌に蓄積することがわかっており、肌の老化を進める原因となると考えられます。
老化細胞を取り除くことは、肌の老化を抑えることにつながります。メナードは、肌における老化細胞を除去するメカニズムを明らかにし、さらに、老化細胞を取り除くことが、幹細胞から新しい細胞が生まれるきっかけになることを突き止めました。すなわち、肌には本来、自ら老化の原因を取り除き、再生を始める「自浄」機能ともいえる働きがあることが明らかになりました。
老化細胞の除去が再生につながる
表皮(基底層)では、まず基底細胞がJAG1というタンパク質で老化細胞を認識し、有棘層へ押し出すようにして除去することがわかりました。老化細胞を除去した基底細胞は、EGFというタンパク質を分泌し、それが表皮幹細胞の受容体(EGFR)に伝達されると、表皮幹細胞から新しい基底細胞が生み出されることがわかりました。
真皮では、免疫細胞の一種であるマクロファージがSTAB1というタンパク質で老化細胞を認識し、取り込んで消化することで除去しています。老化細胞を除去したマクロファージはFGF2というタンパク質を分泌し、それが真皮幹細胞の受容体(FGFR1)へ伝達されると、真皮幹細胞から新しい線維芽細胞が生み出されることがわかりました。
このように、表皮と真皮両方において、「老化細胞を除去する機能」と「除去したことを幹細胞に知らせ、新しい細胞を生み出す機能」が備わっており、老化が進行しないようにするとともに、幹細胞による皮膚の生まれ変わり(再生)を促しています。
「自浄」機能は加齢で低下する
表皮、真皮それぞれにおける老化細胞を除去する機能と除去した情報を伝える機能は、加齢にともなって低下することがわかりました。そのため、歳をとるにしたがって老化細胞が蓄積しやすくなり、幹細胞から新しい細胞も生まれにくくなると考えられます。
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