肌のハリを支えている真皮のコラーゲン線維には、様々な種類があります。肌のコラーゲン線維は主にタイプ1コラーゲンからなりますが、シワ発生の原因について研究する中で、タイプ1コラーゲンとともにコラーゲン線維を形成している「タイプ3コラーゲン」に着目しました。タイプ3コラーゲンは、コラーゲン線維のしなやかさに関わるコラーゲンで、笑ったり、怒ったりしたときに一時的にできるシワが元に戻る力である「復元力」に影響を与えます。
復元力の高い肌のコラーゲン線維は、タイプ1コラーゲンとタイプ3コラーゲンの割合が4対1です。しかし、加齢とともにタイプ3コラーゲンが減少し、バランスがくずれます。その結果、コラーゲン線維のしなやかさが損なわれ、肌の復元力が低下します。この肌の復元力の低下がシワの発生につながっていきます。
加齢によるタイプ3コラーゲンの減少
加齢によるタイプ3コラーゲンの減少のメカニズムを研究しました。線維芽細胞から生成されたコラーゲン分子の両端には、プロペプチドという、コラーゲン線維を形成する際に不要となるものが存在しています。このプロペプチドが切断されて初めてコラーゲン線維を形成することができます。このプロペプチドは、プロペプチド切断酵素で切断されますが、コラーゲン分子のタイプごとに専用酵素があります。
(タイプ1コラーゲンの代表的なプロペプチド切断酵素:ADAMTS14、BMP-1、タイプ3コラーゲンの代表的なプロペプチド切断酵素:メプリン)
タイプ1コラーゲンとタイプ3コラーゲンのプロペプチド切断酵素の加齢変化を確認した結果、タイプ3コラーゲンのプロペプチド切断酵素だけが加齢とともに著しく減少してしまうことを突き止めました。すなわち、タイプ3コラーゲンのプロペプチド切断酵素の加齢による減少が、タイプ3コラーゲンの減少の原因であることがわかりました。
タイプ3コラーゲンだけが、加齢によって減少するため、コラーゲンのバランスがくずれます。その結果、肌の復元力が低下してシワが発生します。